金融システムの安定化を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置

1. 経緯

リーマン・ブラザーズの破綻等に端を発した先般の国際的な金融危機の中で、金融システム上重要な金融機関の破綻等が、内外の金融市場を通じて伝播し、実体経済に深刻な影響を及ぼすおそれがあることが明らかとなりました。

その経験を踏まえ、金融機関が万一破綻に至るような場合においても、秩序ある処理を可能とする枠組みを整備するための議論が国際的に進められ、平成23年10月には、FSBにおいて新たな指針である「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」が策定され、平成23年11月のG20カンヌ・サミットにおいて、国際的に合意されました。

こうした国際的な議論の進捗と並行して、米欧主要国においては、金融機関の実効的な破綻処理に関する新たな包括的な枠組みが整備されてきています。

我が国においても、こうした国際的な流れを踏まえて、市場等を通じて伝播するような危機に対して、金融機関の秩序ある処理に関する枠組みを整備するため、預金保険法等が平成25年6月に改正されました。

平成26年3月、改正預金保険法の施行に伴い、新たに「金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置(=以下「秩序ある処理」といいます。)」が導入されました。

2. 秩序ある処理に関する措置の導入

(1) 秩序ある処理に関する措置の必要性の認定

秩序ある処理に関する措置の必要性の認定については、現行の預金保険法における金融危機対応措置と同様に、極めて高度な判断を要するため、金融危機対応会議(構成員:内閣総理大臣(議長)、内閣官房長官、金融担当大臣、金融庁長官、財務大臣、日本銀行総裁)の議を経て、内閣総理大臣が、金融システムの安定を図るために、当該措置を講ずる必要がある旨を認定(以下「特定認定」といいます。)することとされました。

(参考)金融危機対応会議は、内閣総理大臣の諮問に応じ、金融機関等の大規模かつ連鎖的な破綻等の金融危機への対応に関する方針その他の重要事項について審議し、及びこれに基づき関係行政機関の施策の実施を推進する事務を司る。

(2) 措置の対象となる金融機関等

先般の国際的な金融危機の経験を踏まえ、金融市場における急速な信認低下、破綻時における混乱、実体経済への影響を回避し、金融システムがその強靭性を保持するためには、金融市場・金融業全体をカバーすることが重要であるとの考え方の下、金融業全体(預金取扱金融機関、保険会社、金融商品取引業者、金融持株会社等、以下これらを総称して「金融機関等」といいます。)が措置の対象とされました。

(3) 措置内容と発動要件

特定第1号措置

措置内容

対象となる金融機関等を機構の特別監視(注)下におき、流動性の供給等を行うものです。

発動要件

我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれがあると認められ、かつ、金融機関等が債務超過でないとき。

(注)金融機関等の秩序ある処理に関する枠組みにおいては、内閣総理大臣は、金融危機対応会議の議を経て特定認定された金融機関等について、その業務の遂行並びに財産の管理及び処分が機構により監視される者として指定することになります。この指定を受けた者を「特別監視金融機関等」といいます。
機構は、特別監視金融機関等の業務の遂行並びに財産の管理及び処分について、必要な助言等(助言、指導又は勧告)をすることができます。

また、内閣総理大臣は、我が国の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれを回避するため必要があると認めるときは、特別監視金融機関等の業務の遂行並びに財産の管理及び処分に関して必要な措置を命ずることができます。

金融機関の秩序ある処理 (1) (債務超過でないことを前提)

(出所)金融庁「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成25年法律第45号)に係る説明資料」

特定第2号措置

措置内容

対象となる金融機関等を機構の特別監視下におき、機構が管理処分権を掌握しつつ(注1)、金融システムの安定を図るため不可欠な債務等を特定承継金融機関等(注2)に引き継ぎ、その際に特定資金援助(注3)をすることにより、当該債務を履行させるものです。

発動要件

我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱を生ずるおそれがあると認められ、かつ、金融機関等が債務超過又は債務超過のおそれ、支払停止又は支払停止のおそれがあるとき。

(注1) 特定管理を命ずる処分
内閣総理大臣は、特定第2号措置に係る特定認定が行われた場合であって、①当該特定認定に係る金融機関等の業務の運営が著しく不適切であること、②当該金融機関等の業務又は債務について、特定合併等が行われることなく、当該金融機関等の業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、その廃止又は不履行により我が国の金融システムの著しい混乱を生じさせるおそれがあることのいずれかに該当すると認めるときは、当該特定認定に係る金融機関等に対し、機構による業務及び財産の管理を命ずる処分(以下「特定管理を命ずる処分」といいます。)をすることができます。特定管理を命ずる処分があったときは、当該特定管理を命ずる処分を受けた金融機関等を代表し、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権限は機構に専属することとなります。

(注2) 機構は、特別監視金融機関等の債務等承継により業務又は債務を引き継ぎ、かつ、その業務の暫定的な維持継続又は債務の弁済を円滑に行うために、内閣総理大臣の決定を受け、以下の子会社を設立することができます。なお、以下の子会社を総称して「特定承継金融機関等」といいます。
・特定承継銀行
・特定承継保険会社
・特定承継金融商品取引業者
・特定承継会社

(注3) 特定合併等(注4)を行う金融機関等で特定第2号措置に係る特定認定に係る金融機関等(以下「特定破綻金融機関等」といいます。)でない者等(以下「特定救済金融機関等」といいます。)の特定合併等を援助するために機構が行う措置のことを「特定資金援助」といいます。 機構は、特定救済金融機関等からの申込みを受け、内閣総理大臣が一定の要件に該当する場合に限り特定合併等について認定を行うことを前提に、運営委員会の決議を経て特定資金援助を行う旨の決定ができることとなります。なお、機構は、特定資金援助として、金銭の贈与など、預保法に掲げられた措置を行うことができます。

(注4) 特定破綻金融機関等と他の金融機関等との合併、事業譲渡や債務引受けなどを「特定合併等」といいます。

金融機関の秩序ある処理 (2) (債務超過等の場合)

(出所)金融庁「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成25年法律第45号)に係る説明資料」

(4) 危機対応勘定と特定負担金

機構は、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置に係る業務等の経理については、機構の一般勘定ではなく、危機対応勘定で区分経理することとなります。

また、金融機関等は、機構の危機対応業務(特定認定に係る金融機関等又は特定承継金融機関等に係るものに限る。)の実施に要した費用に充てるため、機構に対し、特定負担金を納付しなければならないこととなります。

ただし、政府は、特定負担金のみで危機対応業務に係る費用を賄うとしたならば、金融機関等の財務の状況を著しく悪化させ、我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれがあると認められるときに限り、機構に対し、当該業務に要する費用の一部を補助することができることとなっています。

(5) 機構における今後の取組み

機構は、今般の預保法等の改正による本措置の導入を踏まえ、市場型金融危機対応の執行において重要な役割が与えられたことから、関係当局等と連携しつつ態勢整備を進め、対応力の強化を図ることとしています。


機構の活動
資金援助等実績
金融機関の破綻処理
資本増強・資本参加(震災対応含む)
健全金融機関等からの資産買取
特定回収困難債権の買取り
不良債権回収、責任追及
資金調達(借入れ・預金保険機構債)
立入検査
国際業務・調査研究
振り込め詐欺救済法に基づく業務
金融システムの安定化を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置