3. 反社会的勢力による直接的な競売妨害 (Xパターン)

バブルが崩壊した平成入り後、反社会的勢力の不動産売買市場への関わり方は大きな変化を見せる。バブル崩壊直後の地価急落時期には、いわゆる占有屋と呼ばれるフロント企業による競売妨害が急増し、貸手の資金回収に対する大きな脅威となった。

最も基本的とも言えるパターンを図(Xパターン)に示してみた。債権回収に伴う担保権実行、競売等に対抗する際、悪質な不動産所有者は、いわゆる占有屋と呼ばれるフロント企業を利用することが多かった。占有屋は、①対象となっている建物を物理的に占拠する、②更地の場合はそこに仮設の小屋等を建設してやはり関係者に居住させる、といった手段により、担保権実行や競売による債権回収に抵抗した。

このバリエーションとして直接的な示威等による妨害工作ではない手法もあった。例えば、③対象となっている土地・建物に暴力団の関与を匂わす張紙・立札を設置する、④裁判所で閲覧されている物件明細書や現状調査報告書に暴力団関係者の名刺を挟み込むなどして、やはり暴力団の関与を匂わせるといった手法である。


――預金保険機構・整理回収機構が関係した典型的な例として、①A県において、エセ右翼が街宣車を競売対象土地に駐車させることによって競売妨害を図ったケース、②B県において、ビル一室の入口に組事務所の看板を掲げて示威行為を行ったケース等がある。

債権者の中には残念ながら、債権回収を急ぐ目的から、こうした占有屋に対して高額の「立ち退き料」を支払うことにより問題解決を行うこともあった。このような土地関係のトラブルが大きな実入りとなることに気づいた反社会的勢力は様々な手段を使って介入を繰り返すことになる。反社会的勢力の不動産売買への介入は半ば公然かつ大規模なものになっていったのである。

Xパターンは担保権実行・競売妨害のプロトタイプ的な手法である。この変型として占有屋による執行妨害に際し、「掃除屋」と呼ばれる別のフロント企業が絡んでいるケースがある(図X´パターン)。「掃除屋」とは不法に土地・建物を占拠している占有屋を物理的にかつ暴力的に排除することを業とする輩のことを指す。残念なことに「掃除屋」を債権者が利用したケースもあったとは思われるが、一般的には占有屋に占拠されている不動産についての情報を聞きつけるなどした「掃除屋」が、「占有の速やかな排除」をうたい文句に債権者に利用を迫ることが多かったようである。無論、こうした掃除屋と占有屋は裏で結託していることが多く、掃除屋が債権者から受けた高額の掃除料(占有排除料)の一部が内々結託していた占有屋に渡ることも珍しくはなかったであろう。

ただ、「掃除屋」と「占有屋」が結託しているような場合は、当事者同士間で事案が処理され、表面化してこない。また、更に言えば、「掃除屋」「占有屋」と「債権者」が共生関係になっているケースも考えられる。このため預金保険機構・整理回収機構が取り扱った事例には、こうしたX´パターン事案は含まれていない。

以上のX、X´のパターンはいずれも反社会的勢力の本来的な示威活動や暴力行為に依拠するものであるが、こうした行為に対する法的・制度的な対応も徐々に進められた。

例えば、平成8年の民事執行法の改正では、売却のための保全処分や競売開始決定前の保全処分が新設された。

売却のための保全処分についてみると、この改正前は、保全処分の相手方は債務者に限定されていたが、この改正により、債務者以外に「不動産の占有者」に対しても保全処分を行うことが可能となった4

また、平成10年施行の「競売手続の円滑化等を図るための関係法律の整備に関する法律」では新たに買受けの申出をした差押債権者のための保全処分制度を新設5している。これにより占有者等が不動産の売却を困難にする行為をした時、その占有を排除し、執行官保管又は債権者保管とすることができる保全処分を行えるようになった。


4     民事執行法第55条(売却のための保全処分等)

執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為(不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれがある行為をいう。以下この項において同じ。)をするときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、次に掲げる保全処分又は公示保全処分(執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分をいう。以下同じ。)を命ずることができる。(以下略)

5     民事執行法第68条の2①(買受けの申出をした差押債権者のための保全処分等)

執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法により売却を実施させても買受けの申出がなかった場合において、債務者又は不動産の占有者が不動産の売却を困難にする行為をし、又はその行為をするおそれがあるときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。次項において同じ。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせて、次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)を命ずることができる。

1 債務者又は不動産の占有者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官又は申立人に引き渡すことを命ずること。

2 執行官又は申立人に不動産の保管をさせること。

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