資金交付要綱(金融機能の強化のための特別措置に関する法律第三十五条第三項の規定に基づく預金保険機構の業務の特例に係る業務方法書)

(令和3年7月21日施行)

(目的)

第一条 この資金交付要綱は、金融機能の強化のための特別措置に関する法律(平成十六年法律第百二十八号。以下「法」という。)第三十五条第三項の規定に基づく預金保険機構(以下「機構」という。)の業務の特例に係る業務(以下「資金交付業務」という。)の方法を定め、もってその業務の適正かつ円滑な運営に資することを目的とする。
 

(用語)

第ニ条 この資金交付要綱において使用する用語は、法のほか、預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)において使用する用語の例による。
      

(資金交付の目的)

第三条 機構による、法第三十四条の十第二項第七号に規定する資金交付契約に基づく契約金融機関等(機構と資金交付契約を締結した認定金融機関等(法第三十四条の十五第一項に規定する認定金融機関等をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)に対する資金の交付は、法第四章の三金融機関等の経営基盤の強化のための措置の実施に関する特別措置の定めるところにより、契約金融機関等が事業の抜本的な見直しとして実施する経営基盤の強化のための措置の円滑な実施に寄与し、もって契約金融機関等の業務の健全かつ効率的な運営及び地域における経済の活性化に資することを目的とする。
 

(資金交付の対象となる経費等)

第四条 資金交付の対象となる経費は、契約金融機関等が事業の抜本的な見直しとして実施する経営基盤の強化のための措置の実施に要する経費(主務省令(法第五十六条第二項各号に規定する主務省令をいう。)で定めるものに限る。以下同じ。)とする。
2 資金交付の限度額は、前項に規定する経費の総額の三分の一又は三十億円のいずれか低い額とする。
    

(資金交付契約の締結)

第五条 機構は、認定金融機関等から令和八年三月三十一日までに資金交付契約の締結の申込みを受けた場合において、機構の財務の状況その他の事情を勘案して、相当と認めるときは、主務大臣及び財務大臣の認可を受けて、当該申込みに係る資金交付契約を締結することができる。
2 機構は、前項の申込みをする認定金融機関等から、次に掲げる事項を記載した資金交付契約締結申込書を提出させるものとする。     
一 当該認定金融機関等の商号又は名称及び住所
ニ 法第三十四条の十第三項の規定に基づく認定を受けた日
三 交付を求める資金の額、当該資金の交付を受けて行う事業の抜本的な見直しとして実施する経営基盤の強化のための措置(以下「対象措置」という。)の内容、対象措置の実施に要する経費の額並びに対象措置の開始及び完了の時期
3 前項の申込書には、次に掲げる書類を添付させるものとする。     
一 法第三十四条の十第三項の規定により認定を受けた実施計画(法第三十四条の十第一項に規定する実施計画をいう。以下同じ。)及びその添付書類の写し
ニ その他資金交付契約を締結するため参考となるべき書類
 

(資金交付契約)

第六条 資金交付契約は、次に掲げる事項を含むものとする。     
一 契約金融機関等は、偽りその他不正の手段により資金の交付を受けてはならないこと。
ニ 契約金融機関等は、法若しくは法に基づく主務大臣の処分又は資金交付契約に従い、善良な管理者の注意をもって資金交付契約を履行せねばならず、いやしくも交付を受けた資金を対象措置の実施以外の用途に使用してはならないこと。
三 契約金融機関等は、対象措置を実施するための契約をするときは、対象措置を実施する上で一般の競争に付すことが困難又は不適当である場合を除き、一般の競争に付すよう努めるべきこと。
四 契約金融機関等は、対象措置の実施に要した経費については、帳簿及び全ての証拠書類を備え、他の経理と明確に区分して経理し、常にその収支の状況を明らかにしておかなければならないこと。
五 契約金融機関等は、前号の帳簿及び証拠書類を、実施計画の実施期間の終了後五年間、機構の要求があったときは、いつでも閲覧に供せるよう保存しておかなければならないこと。
六 契約金融機関等は、交付を受けた資金により取得し、又は効用の増加した財産(以下「取得等財産」という。)については、資金交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して機構が定める期間を経過するまでの間、善良な管理者の注意をもって管理し、資金交付の目的に従って、その効率的運用を図らなければならないこと。
七 契約金融機関等は、取得等財産のうち機構が定めるものについて、資金交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して機構が定める期間を経過するまでに、機構の承認を受けないで、これを譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、又は取り壊すこと等を行ってはならないこと。また、機構は、機構の承認を受けて取得等財産の処分等をすることにより契約金融機関等に収入があったときは、期限を定めて、交付した資金の全部又は一部を機構に返還させることができるものとすること。
八 契約金融機関等は、取得等財産のうち機構が定めるものについては、帳簿及び全ての証拠書類を備え、常にその管理状況を明らかにしておかなければならないこと。
九 契約金融機関等は、前号の帳簿及び証拠書類を、資金交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して機構が定める期間の経過後五年間、機構の要求があったときは、いつでも閲覧に供せるよう保存しておかなければならないこと。
十 機構は、資金交付業務を行うため特に必要があると認めるときは、契約金融機関等の資金交付契約の履行に関する事項を調査するため、機構の職員に当該契約金融機関等の営業所その他の施設への立入調査を行わせることができること。
十一 機構は、第十一条第一項の規定により資金交付契約を締結する全ての契約金融機関等に対して交付できると認定した資金の額の合計額が、資金交付業務の財源に充てることができる積立金の額を超えるときは、契約金融機関等に対して交付できる資金の額の全部を交付しないこと又は一部を減額した額を交付することができること。この場合において、交付した額が第十一条第一項の規定により認定した額に満たないときは、機構は、各契約金融機関等の実施計画の実施期間内における資金交付業務の財源に充てることができる積立金の額を財源として、当該差額を交付することができること。
十二 機構は、契約金融機関等が法第三十四条の十三第一項の規定により認定を取り消されたときは、資金交付契約に定める資金交付額の全部を交付しないこととし、既に資金が交付されているときは、期限を定めて、交付された資金の全部の返還を求めるものとすること。この場合において、機構は、契約金融機関等から、認定が取り消された日から納付の日までの日数に応じ、当該資金の額につき年三パーセントの割合で計算した加算金を納付させるものとすること。
十三 機構は、契約金融機関等が法若しくは法に基づく主務大臣の処分又は資金交付契約に違反したときは、資金交付契約に定める資金交付額の全部又は一部を交付しないことができること。この場合において、機構は、交付できる資金の額を超える資金が既に交付されているときは、期限を定めて、その返還を求めるものとし、契約金融機関等から、資金を交付した日から納付の日までの日数に応じ、当該資金の額につき年三パーセントの割合で計算した加算金を納付させるものとすること。
十四 契約金融機関等は、前三号の規定による資金の不交付若しくは資金の返還又は資金の減額により、資金の交付を受けられないことについて、機構に対して損害賠償の請求をしないものとすること。
十五 その他、機構による資金交付業務の適正かつ円滑な運営を確保するために必要な事項
    

(資金交付契約の変更)

第七条 機構は、契約金融機関等から資金交付契約の変更の申込みを受けた場合において、機構の財務状況その他の事情を勘案して相当と認めるときは、主務大臣及び財務大臣の認可を受けて、当該資金交付契約を変更することができる。
2 機構は、前項の申込みをする契約金融機関等から、資金交付契約の変更の内容及びその理由を記載した資金交付契約変更申込書を提出させるものとする。
3 前項の申込書には、次に掲げる書類を添付させるものとする。
一 資金交付契約の変更を求める理由が、法第三十四条の十一第一項の規定による認定を受けたことである場合には、同項の規定により認定を受けた実施計画及びその添付書類の写し
ニ その他資金交付契約を変更するため参考となるべき書類
4 機構は、第一項の規定にかかわらず、機構の財務状況その他の事情を勘案して相当と認めるときは、主務大臣及び財務大臣の認可を受けて、資金交付契約を変更することができる。
5 機構は、前項の規定により資金交付契約を変更しようとするときは、あらかじめ契約金融機関等に通知するものとする。
6 機構は、第一項又は第四項の規定により資金交付契約が変更された場合において、交付できる資金の額を超える資金が既に交付されているときは、期限を定めて、その返還を求めるものとする。
 

(報告又は資料の提出の請求等)

第八条 機構は、契約金融機関等から、法第三十四条の十二の規定に基づき契約金融機関等が実施計画の履行状況に関し参考となるべきものとして主務大臣に提出した報告書又は資料の写し(資金交付業務を行うため必要があると認められるものに限る。)を提出させるものとする。
2 機構は、資金交付業務を行うため必要があると認めるときは、契約金融機関等に対し、資金交付契約の履行に関し必要な事項について報告又は資料の提出を求めるものとする。
3 機構は、資金交付業務を行うため特に必要があると認めるときは、契約金融機関等の資金交付契約の履行に関する事項を調査するため、機構の職員に当該契約金融機関等の営業所その他の施設への立入調査を行わせるものとする。
 

(契約の適切な履行の確保)

第九条 機構は、契約金融機関等による資金交付契約の履行状況に照らして必要があると認めるときは、当該契約金融機関等に対し、資金交付契約の適切な履行を求めるものとする。
 

(実施状況等報告)

第十条 機構は、契約金融機関等から対象措置の実施状況等(対象措置の全部又は一部を実施しないこととしたときを含む。)について、期限を定めて、対象措置実施状況等報告書に必要な書類を添付のうえ提出させるものとする。
 

(交付できる資金の額の認定等)

第十一条 機構は、前条に規定する対象措置実施状況等報告書の提出を受けたときは、提出を受けた書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、契約金融機関等に対して交付できる資金の額を認定するものとする。
2 機構は、前項の規定により交付できる資金の額を認定した後に、契約金融機関等に対して、交付できる資金の額に相当する資金を交付するものとする。
3 前項の規定にかかわらず、機構が資金交付契約を締結する全ての契約金融機関等に対して第一項の規定により交付できると認定した資金の額の合計額が、資金交付業務の財源に充てることができる積立金の額を超えるときは、機構は、契約金融機関等に対して交付できる資金の額の全部を交付しないこと又は一部を減額した額を交付することができる。この場合において、交付した額が第一項の規定により認定した額に満たないときは、機構は、各契約金融機関等の実施計画の実施期間内における資金交付業務の財源に充てることができる積立金の額を財源として、当該差額を交付することができる。
4 機構は、前項の規定により交付できる資金の全部を交付しないこととしたとき又は一部を減額することとしたときは、直ちに、契約金融機関等に通知するとともに、主務大臣及び財務大臣に報告するものとする。
5 機構は、第二項及び第三項の規定により契約金融機関等に対し資金を交付したときは、直ちに、主務大臣及び財務大臣に報告するものとする。
 

(資金の不交付等)

第十二条 機構は、契約金融機関等が法第三十四条の十三第一項の規定により認定を取り消されたときは、資金交付契約に定める資金交付額の全部を交付しないこととし、既に資金が交付されているときは、期限を定めて、交付された資金の全部の返還を求めるものとする。この場合において、機構は、契約金融機関等から、認定が取り消された日から納付の日までの日数に応じ、当該資金の額につき年三パーセントの割合で計算した加算金を納付させるものとする。
2 機構は、契約金融機関等が法若しくは法に基づく主務大臣の処分又は資金交付契約に違反したときは、主務大臣及び財務大臣と協議して、資金交付契約に定める資金交付額の全部又は一部を交付しないことができる。この場合において、機構は、交付できる資金の額を超える資金が既に交付されているときは、期限を定めて、その返還を求めるものとし、契約金融機関等から、資金を交付した日から納付の日までの日数に応じ、当該資金の額につき年三パーセントの割合で計算した加算金を納付させるものとする。
3 機構は、契約金融機関等に交付した資金の総額が、対象措置の実施に要した経費の総額の三分の一を超えることとなるときは、期限を定めて、その超える部分の資金の返還を求めることができる。
4 前三項の規定は、既に対象措置について交付できる資金の額が確定した後においても適用があるものとする。
5 機構は、第一項から第三項までの規定により契約金融機関等に対し資金の交付を行わないこと又は資金の返還を求めることとしたときは、直ちに、契約金融機関等に通知するとともに、主務大臣及び財務大臣に報告するものとする。
 

(財産処分の制限)

第十三条 機構は、契約金融機関等から、取得等財産のうち機構が定めるものについて、資金交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して機構が定める期間を経過するまでに、これを譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、又は取り壊すこと等の承認の申請を受けたときは、主務大臣と協議して、承認を行うことができる。
2 機構は、前項の場合において、機構の承認を受けて取得等財産の処分等をすることにより契約金融機関等に収入があったときは、主務大臣と協議して、期限を定めて、交付した資金の全部又は一部を返還させることができる。
 

(延滞金等)

第十四条 機構は、契約金融機関等に対して、第七条第六項、第十二条第一項から第三項まで又は前条第二項の規定により資金の返還を求めた場合において、契約金融機関等がこれを機構の定めた期限までに返還しなかったときは、当該期限の日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その返還未了の額につき年三パーセントの割合で計算した延滞金を納付させるものとする。
2 機構は、やむを得ない事情があると認められるときは、主務大臣及び財務大臣と協議して、本要綱に定める加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。
 

(財源)

第十五条 機構が資金交付契約に基づき資金を交付するために必要な経費の財源は、その資金の交付をする日を含む機構の事業年度の前事業年度における法第四十三条の二第一項に規定する積立金の一部をもって充てるものとする。
2 機構は、前項に定める積立金があるときは、金融機能の強化のための特別措置に関する法律施行令(平成十六年政令第二百四十号)で定める金額の範囲内で内閣総理大臣及び財務大臣の承認を受けた金額を、翌事業年度に係る預金保険法第三十九条の認可を受けた予算及び資金計画の定めるところにより、翌事業年度における資金交付業務の財源に充てることができる。
 

(権限の委任)

第十六条 この資金交付要綱における主務大臣は、法第五十六条で定める者とする。
2 法第五十七条で定めるところにより、法による内閣総理大臣の権限が金融庁長官に委任された場合において、当該委任された権限に係るこの資金交付要綱の規定中「内閣総理大臣」又は「主務大臣」(前項の規定により内閣総理大臣の権限とされた部分に限る。)とあるのは、「金融庁長官」とする。
 

(その他)

第十七条 この資金交付要綱に定めるもののほか、資金交付業務の実施に関し必要な事項は、内閣総理大臣及び財務大臣の承認を受けて、理事長が定めることができる。ただし、当該事項のうち軽微なものについては、内閣総理大臣及び財務大臣の承認を受けることを要しない。
 

附則

(施行期日)

第一条 この資金交付要綱は、新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律(令和三年法律第四十六号)附則第一条第一号に掲げる施行の日から施行する。
 

(経過措置)

第二条 機構は、前条の施行の日(以下この条において「施行日」という。)を含む事業年度の前事業年度における金融機能強化勘定の積立金のうち内閣総理大臣及び財務大臣の承認を受けた金額を、施行日を含む事業年度に係る預金保険法第三十九条の認可を受けた予算及び資金計画の定めるところにより、当該事業年度における資金交付業務の財源に充てることができる。

ページトップへ戻る