業務内容

預金保険機構が行っている業務の主なものを次のとおり紹介します。

1.預金保険業務

(1) 保険料の収納
 

当機構は、預金保険制度の運営原資として、預金保険制度の対象金融機関から、毎年度、保険料を受け入れています。保険料の金額は、預金保険制度の対象預金などの残高に、当機構の運営委員会で議決され、金融庁長官、財務大臣の認可を受けた保険料率を乗じて計算されます。

(2) 名寄せデータ整備等
 

預金保険制度の対象金融機関は、万が一破綻した場合に名寄せに必要な預金者データ等を速やかに当機構へ提出できるように、平時から預金者データ及びシステム等を整備するよう預金保険法で義務づけられています。

当機構では、金融機関の預金者データ及びシステム等の整備を支援するため、金融機関から名寄せデータの提出を求め、それが当機構指定フォーマットに沿って正しく作成されているかを当機構のシステムにより検証したり、金融機関への研修・助言などを行っています。

(3) 保険金及び仮払金の支払い(定額保護)
 

当機構は、保険事故が発生した時(金融機関の預金等の払戻しの停止ほか)は、決済用預金については全額を、また利息の付く普通預金等については、1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等を合算した額を保険金として支払うことができます。

なお、保険金の支払に時間を要する場合は、預金者からの請求に基づいて、当座必要な資金として、仮払金(現行限度額は、普通預金<元本のみ>1口座当たり、60万円)を支払うことができます。

(4) 救済金融機関等に対する資金援助
 

当機構は、合併等を行う救済金融機関又は救済銀行持株会社等に対し、合併等を援助するため、資金援助を行うことができます。資金援助の方法には、金銭の贈与、資金の貸付け又は預入れ、資産の買取り、債務の保証又は引受け、優先株式等の引受け等及び損害担保があります。

そのほか、破綻金融機関がその事業の一部を他の金融機関に譲渡する場合又は付保預金移転を行う場合には、破綻金融機関の債権者間の衡平を図るため、当該破綻金融機関に対して資金援助を行うことができます。

また、資金援助に係る合併等の後、救済金融機関、救済銀行持株会社等から追加の資金援助の申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、追加の資金援助を行うことができます。

なお、優先株式等の引受け等を申し込むときは、当機構に対し、健全性確保のための計画を提出しなければならないと定められています。

(5) 預金保険制度や機構業務の広報
 

当機構では、預金保険制度及び当機構の役割や業務について、預金者等の理解をより一層深めるため、各種媒体を活用し、預金者の目線に立った分かりやすい広報の充実に努めています。

2.破綻処理業務

(1) 金融整理管財人等に関する業務
 

金融庁長官が、金融機関に対し、債務超過の場合などの要因があると認めて、「金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分」(「管理を命ずる処分」)を発出する際、当機構自身が法人として金融整理管財人に選任される場合があります。そのときは、当機構の職員を破綻金融機関に派遣し、金融整理管財人業務に当たらせます。金融整理管財人の主な業務は、

  旧経営陣に代わって破綻した金融機関の業務を運営すること
  受皿となる金融機関を探すとともに、当該金融機関に対して円滑に事業を譲渡すること
  破綻した金融機関の役員等に対する責任追及を行うこと
  などです。
 

当機構では、当機構が金融整理管財人に任命された場合を想定して破綻処理の事務手続きを準備し、また、その処理に万全を期すため、定期的に実務訓練を行っています。

(2) 預金等債権の買取り
 

当機構は、保険事故が発生したとき、預金保険で保護される範囲を超える部分の預金等について、預金者等からの請求に基づいて、当機構が決定した一定の率(概算払率)を乗じた額(概算払額)で買取ることができます(概算払)。ただし、担保権が設定されている預金等は対象から除かれます。

概算払率は、保険事故が発生した金融機関の破産配当見込額等を考慮して決定されます。

なお、買取り後、破産配当金・弁済金として回収した場合において、回収額が、預金等債権の買取りに要した費用を差し引いても預金者等に支払った概算払額を上回る場合は、その差額を追加的に支払います (精算払)。

(3) 金融危機対応措置としての全額保護や特別危機管理
 

内閣総理大臣は、我が国又は対象金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、破綻金融機関又は債務超過の金融機関の救済金融機関に対する保険金支払コストを超える額の資金援助(預金等の全額保護)、破綻金融機関に該当し、かつ債務超過の銀行などを対象とした当機構による全株式の取得(特別危機管理)の措置の必要性の認定を行うことができます。

当機構は、今までに、足利銀行の全株式を取得する特別危機管理の措置を行いました。なお、足利銀行の特別危機管理は、平成20年7月に終了しました。

(4) 金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置の業務
 

当機構は、内閣総理大臣が我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱を生ずるおそれがあると認め機構による業務及び財産の管理を命じる処分(「特定管理を命じる処分」)を行った場合、当該処分を受けた金融機関等の管理処分権を掌握しつつ、金融システムの安定を図るため不可欠な債務等の譲渡を行うなどの金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置の業務を行います。

3.資本増強業務

(1) 金融危機対応措置としての資本増強
 

内閣総理大臣は、我が国又は対象金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、金融機関の自己資本の充実のための当機構による株式等の引受け等の措置の認定を行うことができます。当機構は、りそな銀行に対して平成15年に金融危機対応措置に基づく資本増強を実施しました。なお、りそな銀行への上記公的資金は、平成26年7月に返済が完了しました。

(2) 金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理としての資本増強
 

当機構は、内閣総理大臣が我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱を生ずるおそれがあると認め金融機関等の秩序ある処理に関する措置を講ずる必要がある旨の認定を行った場合、銀行のみならず、証券会社、保険会社を含む金融機関等に対して金融機関等の秩序ある処理としての資本増強業務を行うことができます。

4.不良債権買取、責任追及業務

(1) 破綻金融機関等から取得した資産の回収
 

当機構は、預金保険法に基づき、破綻金融機関からの資産の買取・回収を整理回収機構に委託して行っています。また、健全金融機関等からの資産の買取・回収についても、金融機能の安定と再生を図るため、金融再生法に基づき、整理回収機構に委託して行いました。これらの買取った不良債権については、整理回収機構で回収・処分や企業再生に努めていますが、当機構は整理回収機構との間で債権回収に関する協議を行い、必要な指導・助言を行っています。

(2) 悪質な債務者に係る財産調査
 

当機構は、整理回収機構に譲渡された破綻金融機関等の不良債権の回収業務を支援するために整理回収機構に対する指導・助言を行っていますが、特に返済する資力がありながら財産を隠して返済を免れようとする悪質な債務者に対しては、法律で認められた財産調査権を行使して隠蔽財産の発見に努めています。

財産調査の内容としては、金融機関等に対する調査、債務者及びその関係箇所への立入調査が主なものですが、立入調査については、調査の妨害や忌避等があった場合は、罰則が適用される場合もあります。

この当機構の財産調査は、整理回収機構の債権回収に役立てられ、国民負担の軽減に寄与しています。

(3) 破綻金融機関の旧経営陣等の民事・刑事上の責任追及
 

当機構は、金融整理管財人等の立場で自らあるいは整理回収機構と連携して、金融機関を破綻に導いた旧経営者等に対し法的責任を追及しているほか、債権回収を妨害したり、資産を隠蔽する悪質な債務者等に対しても告訴・告発を行っています。

5.資本参加業務

当機構は、金融機関等の金融機能の強化のため、金融機能強化法に基づき整理回収機構に株式等の引受け等を委託する方法により、資本参加業務を行っています。

当機構では、整理回収機構に当該業務を委託するに当たり、整理回収機構に対して資本参加に必要となる資金の貸付けなどを行っているほか、整理回収機構による議決権その他の株主又は出資者としての権利の行使、株式等の処分についての承認等、これまでに引き受けた株式等を適切に管理・処分するための業務を行っています。

6.金融支援業務

(1) 特定回収困難債権買取・回収
 

当機構は、反社会的勢力との関係遮断により、金融機関の財産内容の健全性の確保を通じて、金融システム全体の安定性を図るため、預金保険法に基づき、金融機関が保有する特定回収困難債権の買取・回収業務を行うこととし、その業務を協定銀行である整理回収機構に委託して行っています。

(2) 反社会的勢力に係るデータベース・照会システムの構築
 

金融機関からの照会に応じて反社会的勢力に係る情報を提供するとともに、当該情報を収集・保管するための仕組みの構築を進めています。

(3) 振り込め詐欺救済法に基づく業務
 

当機構では、振り込め詐欺救済法に基づき、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の被害者への被害回復分配金の支払い手続き等に係る公告業務等を行っています。

(4) 休眠預金等活用法に基づく業務
 

当機構では、休眠預金等活用法に基づき、休眠預金等移管金の収納、休眠預金等交付金の交付等の休眠預金等管理業務を行っています。

7.口座登録法・口座管理法に基づく業務

(1) 口座登録法に基づく業務
 

当機構では、口座登録法に基づき、内閣総理大臣と金融機関との連絡等を行うための準備を行っています。

(2) 口座管理法に基づく業務
 

当機構では、口座管理法に基づき、個人番号の通知等を行うための準備を行っています。

8.財務業務

当機構には、現在、10の勘定(注)が設けられています。

当機構では、各勘定につき、資金ニーズに応じた資金調達を行っているほか、一時的に滞留する資金の短期運用などの業務をきめ細かく行っています。資金調達についてみると、金融機関の破綻に伴う業務に必要な資金や、金融機能の安定等のための金融機関への資本増強業務及び資本参加業務に必要な資金を、政府保証を受けて、預金保険機構債発行や借入れにより調達しています。

(注) 預金保険法に基づく一般勘定・危機対応勘定、金融再生法に基づく金融再生勘定、早期健全化法に基づく早期健全化勘定、金融機能強化法に基づく金融機能強化勘定、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金支払勘定、地域経済活性化支援機構法に基づく地域経済活性化支援勘定、東日本大震災事業者再生支援機構法に基づく東日本大震災事業者再生支援勘定、休眠預金等活用法に基づく休眠預金等管理勘定及び口座登録法・口座管理法に基づく口座情報連絡等勘定。

9.国際業務

今次の世界金融危機を背景に、金融システムの安定と預金保険制度の整備・運営の重要性について国際的な認識が高まっています。このような状況のもと、国際的な金融システム安定化のためには、各国の預金保険関係者間での継続的な協調・連携が大変重要となっています。

当機構は、預金保険関係機関による国際組織「国際預金保険協会」への参加や、国際会議の開催を通じて、預金保険に関する国際標準の策定等に参画するとともに、世界の動きをフォローしています。また、我が国にとって経済・金融面の関わりが深く、かつ預金保険制度の導入・整備促進を検討しているアジア諸国に専門家を派遣し、技術支援を実施しています。これらの活動は、我が国の預金保険制度をより一層充実したものとすることに役立つのみならず、我が国の経験の伝達を通じて各国の預金保険制度をより強化することにもつながるものと考えています。

10.調査研究業務

当機構は、預金者保護と金融システムの安定に向けたセーフティ・ネットとしての預金保険制度のあり方等をより深く検討するため、金融経済等の情勢に幅広く目配りしながら、国内外の預金保険制度について調査研究を行っています。なお、調査研究の成果は調査研究誌「預金保険研究」で公表しています。

(参考)シンボルマークについて


預金保険機構シンボルマーク 預金保険機構は、預金者等の保護及び破綻金融機関に係る資金決済の確保を図るため、預金保険制度を確立し、信用秩序の維持に資する、との預金保険法の目的達成に向けて、預金保険制度を適切に運用すること等を使命としています。
 このシンボルマークは、平成10年4月に制定されたもので、ブルーの4枚のプロペラに、預金保険機構の英文名(Deposit Insurance Corporation of Japan)の頭文字DICJをあしらったものです。制定当時は、この4つのプロペラが、預金保険機構に託された4つの業務、「金融機関の破綻処理」、「不良債権の回収」、「破綻金融機関の経営者等の責任追及」、「金融機関に対する資本注入」を示すとともに、預金保険機構グループ、つまり、当機構、住宅金融債権管理機構及び整理回収銀行の3つの組織と、これら組織が保護すべき国民を表していました。
 時代の流れとともに預金保険機構の業務や組織も変遷してきておりますが、このプロペラには、預金保険機構が引き続き、預金者保護と金融システムの安定を維持していく推進力でありたいという願いが込められています。

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