金融機関に破綻等の保険事故(「保険事故の種類と保護の方式」参照)が生じた場合に、預金保険機構は、預金者データに基づき、名寄せを行い、付保預金を特定しますが、仮に破綻した金融機関から預金者データが遅滞なく提出されなければ、預金保険機構は、速やかに名寄せや付保預金の特定ができません。また、提出された預金者データに不備があれば、金融機関が預金者に照会するなどしてデータの修正が完了するのを待って、改めて正確なデータの提出を受けた上で、再度名寄せ等を行うことになります。そうなると、付保預金に係る保険金の支払又はその払戻しに時間を要し、適切な預金者保護に支障が生じます。
さらに、預金保険機構が付保預金を特定して作成する払戻し可能な預金口座等に関するデータ等を、破綻した金融機関が自らのシステムにおいて速やかに処理できなければ、やはり付保預金の払戻し等に時間を要し、適切な預金者保護に支障が生じます。
このほか、資金援助方式による保護を行う場合には、付保預金の額等が算定できないと、救済金融機関等による救済方法やこれに対する預金保険機構の資金援助の決定ができず、円滑な合併等にも支障が生じます。
こうしたことから、金融機関には、日頃から預金者データや預金保険機構が定めた様式(「機構指定フォーマット」といいます)による預金者データ提出のためのシステムの整備や預金保険機構が作成する払戻し可能な預金口座等に関するデータ等を自ら速やかに処理するためのシステム・所定手順等の整備が義務付けられています。
金融機関の破綻後に付保預金が特定される時期は、破綻金融機関の規模のほか、上記のような預金者データの整備状況等によっても異なります。このため、預金保険機構としては、金融機関の破綻時にできるだけ速やかに付保預金を特定し、保険金の支払又はその払戻しを行える環境を整えるよう努めています。
具体的には、随時実施している金融機関への立入検査において、金融機関による預金者データやシステム等の整備状況を確認しています。
また、預金保険機構のシステムを用いて金融機関における預金者データ等の整備状況を検証して、金融機関に預金者データやシステム等の適切な整備を促すとともに、整備促進のための研修・助言も行っています。