(3)資金援助方式による保護

イ. 概要

(保険金支払コスト)

資金援助方式による保護は、救済金融機関等が合併等により破綻金融機関の付保預金を引き継ぐ場合に、預金保険機構が救済金融機関に対して資金援助を行うことによって、付保預金を保護するものです。

預金保険機構が資金援助を行うかどうかを決定するに当たっては、法律により、預金保険機構の財務の状況のほか、資金援助に要すると見込まれる費用及び保険金の支払を行うときに要すると見込まれる費用(「保険金支払コスト」といいます)を考慮し、預金保険機構の資産の効率的な利用に配慮しなければならないとされています。

保険金支払コストは、金融機関が破綻して保険金支払方式による保護を行うとした場合に見込まれる保険金の支払額と保険金の支払に要すると見込まれる経費の合計から、預金保険機構が保険金の支払に応じて取得する預金等債権の倒産手続における回収見込み額(破産配当見込額)を控除して算定します。

保険金支払コスト=保険金支払見込額+保険金支払経費見込額-破産配当見込額

(資金援助の手順)

資金援助方式による保護を行う場合、預金保険機構は、破綻金融機関から提出を受けた預金者データに基づき、保険事故発生日における預金者ごとの付保預金を特定し、その結果を破綻金融機関に通知します。

預金者は、救済金融機関等が合併等を行うまでの間も、付保預金額の範囲内で破綻金融機関から預金等の払戻しを受けることができます。

(衡平資金援助と追加的資金援助)

なお、破綻金融機関が救済金融機関等に事業の一部譲渡又は付保預金移転を行う場合には、破綻金融機関に残る債権の債権者に対する弁済額を確保し、破綻金融機関の債権者間の衡平を図るため、破綻金融機関に金銭の贈与による資金援助を行います(衡平資金援助)。

また、破綻金融機関の資産精査や救済金融機関等の合併等が段階的に行われる場合には、当初の資金援助を行った後、追加的な資金援助を行うことができます(追加的資金援助)。

(対象となる合併等)

資金援助の対象となる合併等は、次のとおりです。当該合併等は、金融庁長官による適格性の認定(注)又はあっせんを受けている必要があります。

救済金融機関との合併
救済金融機関に対する事業譲渡(一部譲渡を含む)
救済金融機関に対する付保預金移転
救済金融機関あるいは救済銀行持株会社等による破綻金融機関の株式の取得
(注) 適格性の認定を受けるには、当該合併等が次の3要件をすべて満たしている必要があります。
  当該合併等が行われることが預金者等その他の債権者の保護に資すること。
  預金保険機構による資金援助が行われることが当該合併等を行うために不可欠であること。
  当該合併等に係る破綻金融機関について、合併等が行われることなく、その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該破綻金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。

(援助の方法)

救済金融機関等は、次のうちの希望する方法での資金援助を申し込むことができます。

金銭の贈与
資金の貸付け又は預入れ
資産の買取り
債務の保証
債務の引受け
優先株式等の引受け等
損害担保(いわゆるロスシェアリング)

ロ. 資金援助の申込みと所要手続

金融庁長官による合併等に関する適格性の認定あるいは合併等のあっせんを受けた救済金融機関等は、預金保険機構に対して資金援助の申込み(注1)を行うことができます。

申込みを受けた預金保険機構は、援助の可否、額、方法等を運営委員会で決定します(注2)

預金保険機構は、この決定に基づき、救済金融機関等や破綻金融機関と資金援助に関する契約を締結の上、資金援助を実施します。

(注1) 優先株式等の引受け等を申込む場合には、財務内容の健全性の確保等のための方策を定めた計画の提出が必要です。
(注2) 優先株式等の引受け等による資金援助に際しては、金融庁長官及び財務大臣の承認が必要です。

ハ. 損害担保

迅速な破綻処理を可能とするため、救済金融機関等が破綻金融機関から譲り受けた貸付債権について、その全部又は一部の弁済を受けられなくなったことで損失が生じた場合に、預金保険機構がその一部を補てん(損害担保=ロスシェアリング)する契約を締結することがあります。

この場合には、契約対象債権について救済金融機関等に利益が生じたときは、その一部を預金保険機構に納付すること(収益分配=プロフィットシェアリング)も併せて契約します。

損害担保契約の実施に当たっては、損失及び利益の経理管理が必要となるため、その事務管理コスト等を勘案することも必要であり、実際に契約を締結するかどうかは、救済金融機関等の意向等を踏まえて、個別のケースごとに判断していくことになります。

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