Ⅲ.破綻処理における財源の基本的な考え方

1. 一般勘定の役割

中長期的な預金保険料率を検討していくうえで、預金取扱金融機関の破綻を念頭に責任準備金が置かれている機構の一般勘定が担う役割をまず確認しておくと、一般勘定は、預金保険制度の基本的な機能である、「決済用預金の全額保護および一人あたり1千万円までの預金等の定額保護」を実現するための勘定であり、金融機関の破綻時に、その費用とそれに係る流動性負担等を担うこととなる。支払時に責任準備金が不足する場合は、外部調達により対応することとなる12

もっとも、金融機関の連鎖破綻が懸念される等、危機的な情勢が今後万が一発生し、内閣総理大臣が法律の規定に基づき金融危機対応措置(預金保険法102条)が必要と判断した場合には、一般勘定とは別の危機対応勘定を用いた措置が発動される。この勘定は預金の全額保護等の際に保険金支払コストを超える資金援助等を経理するための勘定であり、そのコストは金融機関による事後負担(預金保険法122条第1項に基づく「負担金」の納付)で賄われるのが原則である。

具体的には、預金保険法(102条)に基づき金融危機対応措置がとられる場合、債務超過等ではない先に対しては、資本増強(第1号措置)で対応し、危機対応勘定で経理する。債務超過等の先に対しては、預金等の全額保護(第2号措置)や一時国有化(第3号措置)で対応し、保険金支払コストまでは一般勘定から支出され、保険金支払コストを超える部分は危機対応勘定で経理する(図表3)13

このように、システミック・リスクが懸念されるような危機的な状況下では、一般勘定にのみ対応が委ねられる訳ではなく、各種措置をケースに応じて適切に組み合わせ、危機対応勘定も用いて対応することとなる。

因みに、平成金融危機14の際には、金融機関の破綻が相次ぐ中、金融機関自身の収益や自己資本を用いて損失を処理するとともに、資本増強(現在の預金保険法102条 第1号措置に相当)10.4兆円15により34金融機関をサポートしたほか、一般勘定による資金援助(定額保護に係る費用)7.0兆円、特例業務勘定16による資金援助(現在の預金保険法102条 第2号措置に相当)11.4兆円が実施された。

2. 金融機関の健全経営を促進するための金融監督の強化等

前述のとおり、システミック・リスクが懸念されるような危機的な状況下では、2つの勘定を用いた各種措置を実施して対応することとなるが、日頃から金融機関が健全経営を保持していくことがまずもって重要である。

平成金融危機以降、こうした考え方に立ち、平成10年度の早期是正措置の実施、平成11年度の金融検査マニュアルの適用、平成14年度の早期警戒制度の導入等、金融機関の健全経営を維持するための金融監督上の制度が種々導入されている。また、国際金融規制でも、バーゼルⅡおよびⅢ等を通じて、自己資本比率規制の枠組み強化が図られている。

この間、個別金融機関においても、健全経営を目指し、自主的に自己資本の充実17や不良債権の処理18に努めるとともに、リスク管理手法の高度化や体制強化に取り組んでいる。

以上のような各種の取組みもあり、我が国の金融システムは安定しているものと考えられる。


  1. 責任準備金に不足が生じる場合には、内閣総理大臣および財務大臣の認可を受けたうえで、法令で定められた借入限度額の範囲内で、外部調達(民間金融機関借入等、機構債発行、日本銀行借入)により対応する。なお、日本銀行借入は、民間金融機関借入等および機構債発行を実施するまでの一時的な資金繰りに対応するもの。
  2. このほか、危機対応勘定で経理されるケースとしては、預金取扱金融機関だけでなく、保険会社、一定の金融商品取引業者等も対象とした措置として、平成25年6月の預金保険法改正で追加された「秩序ある処理」(126条の2)がある。この場合、債務超過ではない先に対しては、特別監視、流動性供給、信用補完、システム上重要な取引の圧縮、資本増強(特定第1号措置)で対応し、債務超過等の先に対しては、機構が金融機関等の管理等を行い、システム上重要な取引の分離とブリッジ金融機関等への事業譲渡、特定資金援助(特定第2号措置)で対応する。
  3. ここでは、責任準備金残高が既往のピークであった平成6年度末から最大の欠損金となった平成14年度末までとした。
  4. 資本増強は、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律により21先に約1.8兆円、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律により32先に約8.6兆円実施した(一部重複して投入)。平成26年3月末現在の未処分残額は両法合算で約0.6兆円。
  5. 現行制度の危機対応勘定に相当。このうち、約10.4兆円が交付国債(公的資金)、約1兆円が特別保険料(金融機関負担)により賄われた。
  6. 早期警戒制度が導入された平成14年度末と平成25年度末の自己資本比率(国際:国際統一基準行、国内:国内基準行)をみると、主要行等(国際・国内合算ベース:10.05%→国際:16.93%、国内:13.96%)、地方銀行(国際:10.79%→14.37%、国内:9.11%→11.26%)、第二地方銀行(国内:8.17%→10.18%)、信用金庫(10.50%→13.16%)、信用組合(9.31%→11.84%)と全業態で上昇。
  7. 平成14年度末と平成25年度末の不良債権比率(金融再生法開示債権ベース)をみると、主要行(7.2%→1.3%)、地方銀行(7.6%→2.6%)、第二地方銀行(8.9%→3.3%)、信用金庫(9.9%→6.0%)、信用組合(15.3%→7.7%)と全業態で低下。

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