5.公告事務の概要

(1)振り込め詐欺救済法の趣旨

振り込め詐欺救済法は、「預金口座等への振り込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払のため、預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を定め、もって当該犯罪行為により被害を受けた者の財産的被害の迅速な回復に資することを目的」としています(法第1条)。

対象となる犯罪行為としては、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺のほか、ヤミ金融や未公開株式購入に係る詐欺等が該当します。

被害に遭われた方は、この法律に定める手続を経て、失権した振込口座の残高を上限として、被害回復分配金の支払を受ける方法により、被害回復が可能です。

(2)公告手続の流れ

金融機関は、犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、その預金口座等について取引停止等の措置を実施のうえ、機構に対し、債権消滅手続開始公告を求めることとされています(法第3条、第4条)。

公告手続は大きく分けて、債権消滅のための手続と分配金支払のための手続となります。分配を受けるまでの公告手続に要する期間としては、債権消滅手続における権利行使の届出期間は60日以上、その後、債権消滅公告を経て、分配金支払のための支払申請期間として30日以上とされています(法第5条第2項、第11条第2項)。実際の手続きでは、支払申請期間は運用上90日で取り扱っています。この後、金融機関において、申請人が分配金の支払を受けられる者であるか否か等の決定を行った後、支払が行われます。被害者への支払については、消滅預金等債権の額に、金融機関が認定した被害者の被害額の総額に対する割合を乗じたもの(ただし、被害額が上限)となります。分配金支払後に残余金があるときは、金融機関は、その残余金を機構に納付します。納付された残余金は、一定割合を預金口座等の名義人等の救済のために留保し、留保外及び留保分であっても留保する必要がなくなった場合は、犯罪被害者等の支援の充実のために支出することとされています(法第20条第1項、同条第2項)。

図3 手続の流れ

犯罪利用が疑われる口座を金融機関が取引停止にし、機構に失権のための公告を求める。
債権消滅手続開始公告
(権利行使の届出期間 60日)
債権消滅公告
分配金支払手続開始公告
(支払申請期間 90日)
金融機関が支払該当者を決定し、支払を行う。
支払手続終了公告

(3)公告に係るシステムの概要

振り込め詐欺救済法に基づく公告に関する情報は、金融機関から電磁的方法により送付されます(法第34条)。送付された情報は、機構が保有するシステムの中で、所定の事項が記載されているか等の形式上のチェック等の処理が行われ、一定期間ごとに「振り込め詐欺救済法に基づく公告」のホームページにおいて公告されます。

この電磁的方法は、インターネットを利用したデータ送信によるものであるため、SSL方式(Secure Socket Layer。インターネット上でのクレジットカード取引時などに利用されているセキュリティを確保した通信方式。)や電子認証を用いる等、データ改ざん防止等の方策を万全に講じています。

また、送付されたデータの形式上のチェックの結果について、機構は必要に応じて、金融機関にその補正を求めることができます(法第5条第3項、第11条第3項)。

図4 システムの概要

(4)金融機関から機構に納付される金銭の仕組み・使途

  納付される金銭の仕組み
   

金融機関は、預金等債権が消滅手続を経た後に、預金等債権残高(預金等口座残高)が千円未満であるときはその債権額を、また、分配金支払手続完了後に被害者に分配されない預金等債権額が残っているときは残額について、機構に納付することとされており(法第19条)、各四半期分が翌期に納付されます。

  納付される金銭の使途
   

納付金は、主務省令で定めるところにより、「口座名義人等の権利救済」のために必要な留保を行ったうえで、「犯罪被害者等の支援の充実」のために支出することとなっています(法第20条)。

    (ア) 口座名義人等の権利救済
     

振り込め詐欺救済法では、口座名義人等の事後的な救済のために、口座名義人等が期間内に金融機関に対して権利行使の届出を行わなかったことのやむを得ない事情や口座への主要な入金の原因について必要な説明が行われたこと等により、当該口座が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、残高相当額を金融機関に対して請求することができるとされています。また、上記やむを得ない事情等について必要な説明を行った場合において、被害財産以外の財産により当該口座へ入金が行われているときは、残高から被害財産相当額を控除した額の支払を請求することができるとされています(法第25条第1項、同条第2項)。

金融機関は、上記各請求に関して口座名義人等への支払を行おうとする場合に、機構にその旨を通知した後、手続の実施に関して過失がないと思料するとき等は、口座名義人等へ支払った額の相当額を機構に対して請求することができるとされています(法第25条第3項、同条第4項)。

機構がこれまでに口座名義人等の事後的な救済のために支払った実績は、16件・21,236,867円となっています。

    (イ) 犯罪被害者等の支援の充実のための支出
     

振り込め詐欺救済法では、納付金は、前述の口座名義人等の権利救済のための支出のほか、犯罪被害者等の支援の充実のために支出するとされています。具体的な使途については、平成22年9月に設置された、「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」(以下「平成22年PT」という。)にて検討が行われ、最終とりまとめの提言内容を踏まえた主務省令の改正により、「犯罪被害者等の子どもに対する奨学金貸与」及び「犯罪被害者等支援団体に対する助成」の両事業に支出することとされました(平成24年4月1日より施行)。

これを受け、両事業の担い手として「平成22年PT」で選考された「公益財団法人日本財団」により、平成24年12月から上記事業が開始され、機構は、平成25年3月に5,250百万円、平成26年3月に400百万円、平成27年3月に560百万円、平成28年3月に440百万円、平成29年3月に380百万円、平成30年3月に190百万円を支出しています。

なお、平成27年11月に設置された「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」において、預保納付金事業の見直しの検討がなされ、平成28年3月に報告書として取りまとめられました。

同報告書にあるとおり、給付制奨学金の導入等、預保納付金事業の内容を大きく見直すことを踏まえ、担い手の再選定を行うこととされました。同事業の担い手を再選定するための公募が行われ、その結果、同年10月に「公益財団法人日本財団」が選考されました。

同報告書の提言を踏まえた預保納付金事業は、平成29年度から開始されました。

  納付金の管理
   

機構では、納付金について、他の資金と混同することがないよう専用の口座を設けて分別して管理しています。

図5 納付金の仕組み

表7 年度別納付額及び支出額

納付額 支出額
口座名義人等権利救済 犯罪被害者等支援
平成20年度 14,176,835円 0円 0円
平成21年度 2,828,250,381円 0円 0円
平成22年度 1,561,750,812円 11,418円 0円
平成23年度 (注1)426,043,388円 2,062,565円 0円
平成24年度 521,958,179円 3,210,819円 5,250,000,000円
平成25年度 412,652,813円 5,039,738円 400,000,000円
平成26年度 566,264,927円 7,389,961円 560,000,000円
平成27年度 434,998,632円 393,870円 440,000,000円
平成28年度 384,874,088円 615円 380,000,000円
平成29年度 (注2)195,677,473円 3,127,881円 190,000,000円
7,346,647,528円 21,236,867円 7,220,000,000円
(参考)  平成30年3月31日時点の納付金残高   109,116,326円
(納付金に係る利息3,705,665円を含む)
(注1)過大納付額(1,823,829円)調整後の金額
(注2)過大納付額(20,537円)調整後の金額

(5)手数料の徴収及び借入金の流れ

システム経費、人件費等の公告業務に要する費用について、運営委員会の議決を経て定める手数料を、公告を利用した金融機関から徴収します(法第30条)。

手数料は、金融機関から翌年度8月に徴収するため、その間の運営は借入金によって行われ、借入金は金融機関から手数料を徴収後に返済されます。

平成28年度の運営費用(124百万円)に係る手数料は、平成29年8月に金融機関から徴収しました(手数料-預金等債権の消滅手続開始公告及び被害回復分配金の支払手続開始公告について、1件あたり2,892円)。

また、平成29年度の運営費用(最終的な金額は未定)は、現在、借入金で支払われています(平成30年3月31日時点の借入金残高220百万円)。

図6 手数料及び借入金の流れ

以上

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